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知らない街でナンパをされたら毎日が少し明るくなった話

by しの

「駅前で待ってたらナンパされてさぁ!」などというイマドキ女子の文句のような自慢。
ナンパといえど、男性から声をかけられるほどには美人だったり可愛かったりするのだろうなと私は感じる。
街中で、駅で、都心でナンパというとわりとよくある話だとは思うけれど、そのナンパをされる側というのは大抵ものすごく可愛いか、絶世の美女か、流行のファッションに身を包んでいたりかの3択くらいのものだと思うのだ。

ということは、つまり。私には全く縁のないことだということ。
渋谷の街で居酒屋の客引きに捕まることは日常茶飯事だけれど、わざわざイケメンに声をかけられるようなナンパの場面には一生出会わないという、ある意味僻みにも近しい自負が私にはあった。

その、よく訳のわからない自負が、思いもよらない形で崩れ去るというちょっと風変わりなお話。

ただ「さわやか」が食べたかった

私は静岡県にいた。どうしても「さわやか」という静岡にしか店舗を持たないハンバーグ屋さんで「げんこつハンバーグ」が食べたくて、前日に最終の東京発のバスに乗って静岡にやってきていた。静岡にはちょうど、私の高校時代からの親友が一人暮らしをしているので、その子のお家に泊めてもらいつつ夜な夜なガールズトークでもして少しゆっくりしようと考えていた。

静岡に到着し、親友と一夜を過ごした翌日、私たち2人は「さわやか」を食べるために少し大きな街まで赴いた。「さわやか」があるショッピングモールへ向かい、エスカレーターで5階のレストランフロアまで上がったが、店の前は混雑。3連休最終日ということでか家族連れやカップルがたくさん訪れており、最大席に案内をされるまで2時間待ちという盛況ぶりだった。

私たちが店に到着したのは午後3時のことだったが、その時間ですら40分待ちと、さすがの混雑具合。お店の店員さんに名前を伝えた後、近くのお店で時間を潰そうということになり近くの雑貨屋さんに立ち寄り来年の手帳なんかを楽しく見ていた。運命の時は刻一刻と近づいていた。


「ごめんなさい」から始まるナンパのスタイル

手帳コーナーを見ることおよそ25分。私たち2人はある手帳の前で立ち止まって話をしていた。手帳好きの私とその私から次々と出るその手帳の雑学(ただの語りたがり)をどことなくいい感じに聞き流してくれていた友人の立ち止まった時間が長すぎたのか、後ろから「すみません…」と声をかけられた。振り返ると、そこには3人組の女性が立っていた。私たちは「(邪魔だったかな…)」と感じて「ごめんなさい」とその場を立ち去ろうとした。

その時、その3人組の一番前にいた女性が口を開いた。「2人って、大学生?」
驚いた。私たちに純粋に話しかけてきたのだから。「あ、はい。」と少しの不安に身を傾けつつ答えると、その3人組の表情が晴れやかになり、そして彼女たちは言葉を続けた。

「大学生って何が好き?」

私たちは息を飲んだ。なんていうアバウトさなのだろう。詳しく聞いてみると、彼女たちは東京からたまたま来ていて、大学生の知り合いにプレゼントを買いたいのだが大学生が何を好きなのかわからなくて、わかりそうな私たちに話を聞きたいのだという。

なるほど、と納得した反面、すごい行動力の高さに驚いた。大学生にウケるプレゼントといえば、ハンドクリームやマグカップなど、よくある定番の雑貨だったりする。私はそれを彼女たちに伝え、近くの雑貨屋さんなども紹介して、ぴったりのものが見つかるよう応援をした。

そして、たまたま東京から来ている者同士、なんとなく話が弾み、こういうのも何かの縁だからということでお互いに連絡先を交換して別れを告げた。名前も全く知らない彼女たちのことは、交換した連絡先で初めて名前を知ることになる。約束したことは、「またいつか、東京で会おうね」

たまには「たまたま」に任せてみる

「出会い」ってすごくハードルが高くて、なかなかないものだと思っていたし、今だってそんなに頻繁にあるものではないと思っている。少なくとも、私は知らない人に自分から声をかけられるほどアクティブではないし、声をかけてもらったとしてもそんなに上手には話せない。

でも、世の中にはそんなアクティブな人もいる。私は彼女たちと出会って、「出会い」のイメージをガラッと変えることができたし、とても幸せな気分になったりもした。あまりにも稀な経験すぎて、「夢の中」のような感覚もあるけれど。

インターネットやSNSでの出会いなど、たぶん今の世の中は色々な出会い方があるし、それに伴うように危ない事件や変な商売もあると聞く。すべてのことが安心できるわけではないけれど、そんな「たまたま」にたまには身を任せてみてもいいのかもしれない。

彼女たちとした約束が果たされる時、またこの話をみんなで笑って話そうと思う。
「またいつか、東京で会おうね」

(なお、本記事は友人、またお声がけいただいた女性のみなさんに許可を取った上で掲載をしています)


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