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物語はたしかにわたしの中にあった

by しの

18歳の時、私はある物語を頭の中で思い描いていた。
何度も文章にしてみようとペンを取ってはみたものの、それをうまく言葉にすることができないまま2年間が経過し、少しだけ大人になった私はその頭の中にしかなかった物語を文字にしてみることにした。

これからお送りする物語は、わたしの物語。そして、少し下を向いているあなたへ送りたい物語。

何かの違和感を感じて、私は目を覚ました。 起き上がってみても目の前に広がっている景色は、ただ何も見えない、何もない、真っ暗な世界だった。

「ここはどこ・・・?」ぽつんと呟く。もちろん返事はない。胸いっぱいに不安が渦巻く。心の中のざわつきを押さえ込むように、私はひとまずその暗闇の中を歩いてみることから始めた。どこかに出口はきっとあるはずだと信じて。

私は歩く。ただ歩く。どこに進めばこの暗がりから抜け出せるのだろうか。いつになったら抜け出せるのだろうか。何があれば抜け出せるのだろうか。そもそも、抜け出すことは、できるのか。そんなたくさんの疑問を抱えながらも、歩き続けるほか今の私には選択肢すらなかった。

そんなとき、ふと、耳の奥に聞こえてきた声は、あまりにも鮮明で、そして、静かで芯のあるものだった。「誰?」私は心の中で聞こえたその声に応える。“ここだよ”その声は確かに私にそう言った。「どこにいるの?」と、そう問いかけても、聞こえるのはこだまのような私の声だけなのに。

それなのに、私の足は自然とある方向へ歩みを進めた。それはまるで、「ある方向」へ導かれているかのようだった。どこまで進んでも、それは果てしなく長い道で、本当にこの先に何かがあるのかと問われても、私はその問いには答えられない。けれど、止まっていても何も変わらない。そんな想いから進み続けていた。

歩き進めてからいったいどれくらいになるだろうか。なにせ、ここには時計も携帯も時報もニュースもない。何日経ったのか、何時間経ったのか、示すものは何もなかった。
「もうやめてしまおうかな、つかれたよ」そんな思いが頭をよぎっていると、私が歩みを進めるその先に、ぼんやりとした淡い光が見えた。「なにかある」そう確信した私は足早になる。スッと歩くその先に辿り着くと、そこにはうっすらとした人影があった。

“ここだよ”そう、その影は呟いた。「あなただったのね。」そう、言葉を返す。「私をここに連れてきたのは、あなただったのね。」そう続ける。
彼女は何も答えず、しかしその光からは微笑みがみてとれた。“もう大丈夫だね”心の中にそんな声が聞こえた。「何が?」、そう言い終える前に光はスッと消えていく。「あ・・・!」私はどうすることもできず、ただただそこに立ち尽くした。

彼女の言葉の意味を考えようと目を閉じると、まぶたの奥から光を感じた。こんなにもはっきりと光を感じたのはいつぶりだろう。そっと、閉じた眼を開けると目の前は思わず顔をしかめるほど眩しい光で溢れていた。夜明けは、すぐそこまで来ていた。「もう、大丈夫だよ。」彼女にそっとささやくと、どこからか暖かい風が吹いた。私は歩き出す。


この世界は、私が思うよりずっとずっと、多くの光で満ち溢れているのかもしれない。

(この物語はフィクションです)



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